身体を動かすことが好きではない、運動が苦手、という子供は「重心移動が苦手・したくない」という見方もできると考えています。

 

※このページでいうところの「子供」は幼児や小学生低学年中学年ぐらいをイメージしています。

 

自分が転倒するかも、といった危険回避のために、自分の重心点はできるだけ安定の位置に置いておきたい、という本能的な欲求と反射的な反応があるのかもしれません。

 

生まれつき三半規管など身体の体位バランスをとる機能(センサー)の精度が甘いか、あるいは下記しますが、そういった体内のセンサーと、視覚・視神経などの空間認知を把握するための機能が結びついていない、まだ発達してきていない、ということによって運動や動作に不具合が生じているのかもしれません。

 

この話は、子供が車酔いしがち、といったことにも繋がるかもしれませんね。

 

自転車に乗れるようになるのが遅い子でも、大人になっても自転車は乗り続けていますね。

 

子供はまだ筋肉も骨格も、あといろんな神経が成長中で、それが統合されていくのは中学生ぐらいでしょうかね。特に視神経の感性は15歳ぐらい、と言われていたような記憶があります。

 

※ここは個人的な経験的感覚的に語っているので、医学的科学的にはもっと正しい知見や物言いがあると思いますのでご注意ください。

 

 

運動が苦手な子は重心移動に不安がある、そのために自分から積極的に身体を動かそうとしなかったり、体育の授業などでしかたなく運動してもうまくいかず劣等感を持ってしまう、というような悪循環になってしまうのかも。

 

わたしはスキー教師を長くやってきましたが、スキーの初歩的な技術としてプルークボーゲンがありますね。単にボーゲンといったりもしますね。

 

スキーの二本の板を三角形、カタカナの「ハ」の字型にして滑る技術です。

 

なぜこのボーゲンが初心者向きの技術かというと、自分の重心点が「ハ」の字が作る三角形からはみ出ることが無い状態で滑る技術だからです。

 

中級、上級になるとスキー板をそろえて滑るパラレルターンという技術を使うことがほとんどとなりますが、このパラレルターンでは自分の重心の位置は、滑走時はほとんどの時間で二本の板の左右どちらか側に重心がある状態になります。

 

遠心力や慣性が無ければ、重力に引っ張られて雪面に倒れてしまうわけですね。

 

つまり、スキー滑走技術において「初心者を脱出する」ということは、この重心移動の問題を文字通り飛び越えられるか?というポイントに向かうわけです。

 

で、スキーではなく平地の話です。

 

運動の苦手な子は、ざっくり自分の肩幅ぐらいを長直径とした楕円の内部に自分の重心点を起きがちになるのではないでしょうか。(特に重心の前後の移動が恐い)

 

より運動性を高めた活発な動きができるようになるためには、自分の重心点がこの楕円はみ出されるような経験をつんでその状態に慣れる、当たり前になる、としていくことが必要となります。

(本人が必要と考えるか?そんなことが楽しいと思えるか?は別問題です)

 

運動の苦手な子は、たとえば、じぐざくのスラローム的な動きが苦手です。

 

身体を傾けられず、身体が走る方向に正対し、ステップでつじつまを合わせながら斜めに走ったりします。

 

スラロームできる子は、身体を傾けて走るので、身体を傾けた時の倒れる方向に引っ張る重力を自然と利用できるようになって、ますます走ったり運動することが楽しくなります。

 

みて!みて!と周りにアピールしたりして視線を仲間や親御さんなどあちこちにまくので、視界と視神経とバランス機能がどんどん鍛えられてコーディネーションもされていく、ということになります。

 

では、運動の苦手な子に、どうやったら、自分保護の楕円から重心点をはみださせるか?

 

非常に月並みですが、小さな子であれば、手を広げて飛行機になって鬼ごっこなどさせるのが良いと思います。

 

傾いたり・水平になったり・また傾いたり、の繰り返しです。

 

すでにサッカークラブなどで競技の練習を始めているのであれば、アップの時などに背の高めのコーンをいくつも立ててスラロームしながら、コーンの頂点に手をかけてくるくるターンをするような動きをさせるとよいと思います。

 

遊びの中で自然と重心点が足元から離れていくようなトレーニングであればなんでもいいと思います。

 

ひとつだけとても重要なポイントがあります。

 

上記の重心ずらしの運動をする中で、必ず視線に注意してあげる、ということです。

「目によって空間を認知する」という経験を少しずつ意図的に取り入れていく、ということです。

 

身体の体位のバランスを取ることと視神経への刺激と発達の促し。

視神経が体位バランスのセンサーの微調整を行えるように、視神経からのアプローチを図ります。

 

このセットが非常に重要なわけです。

 

運動の苦手な子は身体を傾けると顔も傾けて両目のラインも傾いたままです。

 

そういう瞬間の体感的経験がまず大事なんですが、それを立て直し立て直ししつつ、飛行機ぶんぶんし続けることが大事です。

 

身体は傾いた時でも水平の世界は存在するので、あくまでその水平の世界(言い方を変えると、重力が司る垂直の世界)を認知しつつ運動する、という経験が大事です。

 

難しいことはなく、スラロームの運動をさせながら、途中、何か遠くのものを見る、といった約束事を付け加える、という程度でいいと思います。

 

パパとママの顔をみてニコリする、ぐらいでいいのです。

なにか目標物を見る時に、人間は自然と水平でものを見ます。

つまりこの瞬間、顔は立っていることになります。

重たい頭部が視線によって安定し、身体全体の姿勢も制御されるのです。

 

スラロームして身体が傾いてアンバランス化した身体を視線によって回復し、またアンバランスの世界へ、の繰り返し。

 

子供の視神経が最終的に人間として完成するのは15歳ぐらいというように保健体育の教科書にあったように思います。

 

またサッカーの指導書のうろ覚えですが、子供の視野は下から順々に上がっていく、というように書いてあった気がします。

 

サッカーのスクールは幼児コースから普通に存在しますね。

 

ミニバスケの選手募集は、大概は小学校3年生ぐらいからです。

 

つまり、小学校中学年ぐらいになって初めて人は空間認識能力が本格的に発達し始める、ということなんだと思います。

 

自分もスキーで経験がありますが、小学校低学年までは、そこそこの急斜面でもまったく恐怖を感じなかったのですが、小学校高学年になって同じコースにいって斜度に恐怖してビビってしまった経験があります。

 

高学年になってきっと空間認知力が上がった結果かもしれませんね。

 

ということで、運動が苦手な子供に、ただでさえ動くのが苦手のところに「見ろ!見ろ!」と呼びかけても二重の苦痛になってしまいます。

 

目の使い方については、年齢や普段の運動時の目の使い方などをよく見てあげて、あくまで楽しい中で苦手な運動を克服していってくれたらいいな、と思います。

 

以上、参考になれば幸いです。