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【重心移動のトレーニング】おすすめのグッズは「スライドボード」
重心移動や体重移動のトレーニング用のアイテムとしては、たとえば上の画像の「スライドボード」というグッズがあります。
スケート選手のトレーニングツールとしても有名かと思います。
ただし、このスライドボードを重心移動や体重移動の精度を上げるために使うのであれば注意点があります。
これを使い始めると、正直、かなり疲れます。
なので、みなさん、自分自身の筋肉や肺に負荷をかけるための筋トレや有酸素運動の道具として使い始めると思います。
それはそれでいいと思います。
が、重心移動や体重移動のために使うのなら、逆に、このスケーティング動作をいかに疲れずにやれるか、ということをテーマにしていただきたいと思います。
正確な重心移動や体重移動を身に着けたいのであれば、筋肉に頼るのではなく、骨格と重力と共存することです。
下の章で詳しく書いていますが、たとえば上半身に力が入った状態でスケーティング動作を行ってみてください。
疲れてしまって話にならないと思います。
いかに重力の引っ張るライン(あるいは、それに反発する力の方向)に対して自分の骨格と重心を合わせられるか?姿勢を維持できるか?が精度の高い重心移動のトレーニングとなるわけです。
そして自身の身体の中で「あー、いま肩に力が入った!」「左で蹴るときに肩が・・・」みたいな感じで、自分の身体反応のクセを理解するようにしたらいいと思います。
関節の折り方もクセや硬さがよく分かると思います。
一番下の足首の関節が硬かったりするとよい動きはできないはずですから。
その意味で、足の指でグッと床をつかむことができるか否か?も重要です。
ということで、このスライドボードを使った重心移動のトレーニングはちょっと子供向きではないかもしれませんね。(遊びでやらせるのはグッドですが!)
【重心移動のトレーニング】の考え方、何ができていないのか?
1万年前か5万年前か、もっと前なのか後なのかわかりませんが。
人間がほぼお猿さんだった時代。
この頃には、突然に隣の群れに襲われたりして、速攻で逃げる必要があったり。
重心移動なんてものぐらいはスムーズにできなければ命取りになったわけです。
で、人間の身体の構造は、基本的にその頃とは違っていませんよね。
人間が動物の一種である以上は、「重心移動できる」なんて言葉を使う必要もないくらいに本来は本能的、反射的に重心移動できる能力というか機能が備わっているわけです。
逆に言えば、体重移動をスムーズにしたいのであれば、本来人間に備わっている本能的、反射的な身体の動きを引き出してやればいいだけ、ということになります。
現代人はおまけに、理論や情報、意識過剰で頭でっかちになっていてそれだけで頭と身体が固まり重くなり、更に重心移動がぎこちなくなるわけですね。
子供なんかもコーチに「重心移動をスムーズにぃ~!」なんて声をかけられて、かわいそうに一生懸命、その意味を解釈しようとするので、更にぎこちなくなって・・・。
重心移動がぎこちない(重心移動ができない)、という現象の背景として何が起きているのか?
原因としては以下5つかな。
それぞれ緊密に関連しあっている、と考えています。
- 上半身が固まっているから
- 体重の作用方向と骨格がずれているから
- 関節がロックしているから
- 対応幅が狭い拇指球中心の動きをしているから
- 1~4の理由で無意識に身を守る動作になるから(特に子供)
それぞれ解説しましょう。
重心移動がぎこちない理由①上半身が固まっているから
上半身や身体の部位でまとまって固まっている部分が存在すると・・・
その固まっている部分が重心移動、体重移動の方向について
●遅れる
●行き過ぎる
あるいは
●ちょうどいいところでとどまらない
という現象が起きてしまいます。
メトロノームのおもりを一番先っぽにつけた時のイメージです。
ロックした部位は、その部位がひとつのカタマリになって、コアの重心に加えて、新たに重めの重心がひとつ付加されてしまったような状態になります。
2つの重心点が主導権を取り合ってケンカすることになります。
重心移動がぎこちない人は、運動を行う時あるいは動作中に上半身や肩甲骨まわりを固める癖はないだろうか?考えてみてください。
もちろんあちこちの関節が不自由になって競技時の機能低下を招きます。
「脇を締める」スポーツ選手が陥る常識の罠。実際は、脇を締めると全体の連動性、柔軟性が失われてしまい、怪我をしやすく、パフォーマンスは低下する。多分、本来は手打ちや肩が上がらないための指摘(方便)であり、脇を締めることは目的ではなかったはず。そもそも動ける選手は脇を締めていない。
— バランストレーナー小関勲 (@130koseki) February 20, 2023
これは「ひもトレ」で有名な小関さんのツイートですが、このページとは少し主旨が異なりますが、関節を固めて機能性を落とすとともに、コアとは変な部位にサブ的な重心点を作ってしまう、という二重の問題がでてしまうわけです。
実験として、立って上半身にグッと力を入れて固めた状態で、普通に歩くように一歩足を踏み出してみてください。
一歩足を前に出そうとするだけで、上半身、というか頭部が遅れるのがわかると思います。
遅れるというか、むしろ後ろに引かれる感じ。
ではその状態で、志村けんのヒゲダンスのように、ウッとあご(顔)を前に出してみてください。
一挙にバランスが良くなったのを実感できるでしょう。
これは“反乱軍”の重心から、頭部が分離して、コアの重心点に協力的になったことで起きる現象です。
つまりスムーズな重心移動を継続的に行いたいのであれば、常々生じてくる身体のロックを、常々自動的に解いて余計な重心点を作らないという感覚を身につければいい、ということになります。
誤解ないように書いておくと、必要な時には作り出す(たとえばキックする時とか)、必要ないならリラックスさせておく、という集合離散の感覚です。
重心移動がぎこちない理由②体重の作用方向と骨格がずれているから
この動画を見てください。
徳島の阿波踊りのワンシーンを切り取ったものをお借りしました。
この動画で驚くべきは点は、これだけ関節を曲げて踊っているのに踊り子さんの息が全く上がっていないことです。
これは筋肉に負荷をかけない、筋肉に乳酸を溜めない動作を行っているから、と言えるでしょう。
上半身や肩甲骨周りがロックして固まっていると、動作のたびにいちいちコアの重心とのズレが発生し、その都度、筋肉を使って調整することになり筋肉は疲労していくわけです。
骨格を最大限活かす、骨格に自分の体重をより正確に乗せることができれば、つまりは試合中の疲労度も軽減することができる、ということですね。
言い方を変えると、自分のコアの重心以外に、ムダな重心点を発生させないように、常に身体の骨・筋肉を集合離散させることが重要です。
これは逆に言うと、必要な瞬間にグッと力を一点に集めるための動きである、と言い換えられます。
単に重心移動ができればいい、という話ではなく、パフォーマンスをよくする、そして忘れがちなのは、疲れない身体の使い方をする、という点です。
競技中は、身体のロックしている部分をほどく、逆に固めざるをえない場面は必ず発生しますが、その固める動作に不必要な部位を不必要に参加させない、そして次の一瞬のために緩んでる部位を用意しておく、といった一連の動きが必要となります。
阿波踊りは、サッカー元日本代表の徳島出身の藤本主税さんがゴールパフォーマンとしてよくおこなっていました。
単なるふるさと徳島に関わるパフォーマンスだった、ということではなく、スポーツ選手としての身体操作と踊りとに通じる部分があってやっていたのでは?と勝手に思っています。
上半身や肩甲骨まわりの力を抜く、あるいはしなやかに必要なときにだけ集合離散を行えるようになるには、どのようなトレーニングを行えばいいか?
ひとつには舞踊やダンスをやってみる、あるいは太極拳のようなゆっくりとした重心移動をトレーニングとして取り入れてみる、ということになります。
実際に、太極拳のゆっくりとした重心移動の動きをやってみてください。
あんなにゆっくり動いているのに、上半身に無駄な力が入っていたら、まずゆっくりと動けないことに気が付くとおもいます。
また重心移動や体重移動のトレーニングとして異種目の動きを取り入れていくことがよいと思います。
舞踊や太極拳、エグザイルのようなダンス、ヒップホップやシャッフルダンスの動きを取り入れてみるとよいでしょう。
重心移動がぎこちない理由③関節がロックしているから
上でも書きましたが、人間にはお猿さんの時代より、本能的・反射的に重心移動できる骨格や仕組みが備わっているものと考えましょう。
お猿さん以上に、四足の動物をイメージしたほうがわかりやすいのかな。
つまり、足と手や前進のうねりなどが常に連動しているイメージです。
猫とか動物には「あと一歩が出なかった!残念」みたいなことはないわけです。
必ず間に合わせます。
動物たちのようにしなやかに流れるように全身を連動させて使うためには、あちこちの関節が自然にロックしたり緩んだり、あるいは最大限に回旋ができる、とか、素直に稼働できる状態に置くことが肝要です。
貴方がスポーツ指導者であれば、どのような状態のときに関節の稼働が良くなるのか自分の身体で体感してみることが肝要です。
たとえば野球のイチローさんですが、膝関節と肩の固まり具合との連動について語っている動画があります。
イチロー選手が言ってる
「肩の力を抜くには、膝の力も抜かなければならない」
というのは、まさにその通りで、この事を紐解くと、
膝に力が入ると、太ももの大腿四頭筋が固まり、その固さが、繋がりのある腹筋や胸の筋肉を介して、
肩の三角筋や僧帽筋に伝わってしまうから。 pic.twitter.com/cMEOW2t9QW— 柴 雅仁|治療家・パーソナルトレーナー (@PT_shiba) January 3, 2019
野球10年以上やってたけど、1番嫌いな指導は力を抜けだったなぁ…
たぶん、力を抜けって言ってる人の9割以上は力の抜き方知らないと思う
わいの体でもわいも分からんもん
ちなみにイチローは膝の力って言ってたけど、ぼくは膝の力抜こうとしたら座っちゃった()
— のすけさん (@yuunomuscle) August 23, 2020
肩に力を入れた状態で普通に立って、床に圧をかけるように踏んでみてください。
次に、肩のことなど考えずに、膝の関節がやや曲がるぐらいの感じで脱力してみてください。
どっちが床に圧が掛かる感じがしますか?
ハッと目覚めるぐらいに、後者のほうがじっくり圧がかけられていて、逆に、いつでも床からの反発が受けられるような構えのある立ち方になっていることがわかると思います。
ちなみに、足と足を交差させるようにクロスステップをしてみてください。
まず肩に力が入った状態でやってみてください。
次には、肩の力を抜いていくらか膝の関節が緩んで曲がる程度にしてやってみてください。
前者では、クロスはできても移動ができないのではないでしょうか?
後者ならするするとステップが踏めるでしょう。
肩に力が入っていて膝も突っ張っている時には、実は股関節の回旋の稼働域がかなり狭くなっていることにも気がつくでしょう。
膝関節をゆるませろ、というと、今度は膝だけにフォーカスしすぎて全体が崩れてしまう懸念がありますね。
そして、いったいどのぐらい膝を曲げればいいのか?という疑問もあると思います。
太極拳のひとつの流派の中で、立ち姿勢の訓練方法としての構えとして「站椿功(タントウコウ)」というものがあります。
以下、ひとつの動画を拝借してその「站椿功(タントウコウ)」を紹介しますが、胸の前にふんわりとした大きめのボールをイメージして抱えるような姿勢となります。
スポーツをやる人間は、競技中はつま先立ちというか拇指球を使うイメージが強いと思いますが、実は体重をしっかり支えて大地から反作用をいただける立ち方というのはかかともついた状態の立ち方となります。
よい体重移動をしたいのであれば、踵から始まって拇指球経由で親指で抜ける、といった流れをつかむことが肝要です。
重心移動がぎこちない理由④対応幅が狭い拇指球中心の動きをしているから
重心移動がぎこちない理由⑤1~3で無意識に身を守る動作になるから(特に子供)
【重心移動のトレーニング】目線の置き方が重要
小平奈緒『Link』(30) 自分を変えてくれたオランダ留学
記事はこちら⇨https://t.co/0OjHFoAeCU
自分の考えを言えるようになった経験は、日本に持ち帰った財産の一つ#小平奈緒 pic.twitter.com/lZWEjxp3YT
— 信濃毎日新聞デジタル (@shinmaiweb) February 16, 2023
【重心移動のトレーニング】子供、幼児、低学年はリズムに合わせてどんどん遊ぶ
ゆうま君が足をついたときに、ピョコンピョコンと2回地面を踏んでいます。
これは踊り方として2回踏むようになってはいるのですが、これって教えるのが大変で、また教わってもなかなかできないステップです。
おそらくゆうま君は見よう見まねで踊っているのだと思いますが、ではなぜできているのかというと、これもおそらくですが、身体の条件反射的な動き(反応)なんだと思います。
実験として、肩幅ぐらいで両足つま先立ちして、かかとをドスンと落としてみてください。
踵が接地した瞬間、膝がガクガクと緩んだ感じになって、自然と足が前に出て歩みが始まるのがわかると思います。
ゆうま君は無意識にこの反射反動を利用して少しずつ移動をしているのではないでしょうか。
この反射については、スポーツの身体操作の研究を長年されている九州共立大学の木寺先生が詳しいです。
3歳次男が、自分よりもお尻をしっかり使えてる。
地面をしっかり押せてて、腕も振れてる。
これくらい傾斜があると腰が折れがちだが、動きがブレてない。走ると、力が上方向に逃げがちな父親。
息子達の動きや體の使い方に嫉妬する事、多々あり。筋力のない、赤ちゃんや幼児の動きから学ぶ事多し。 pic.twitter.com/3gFDeSKciy
— 岡本達也 (@tatsuya_choco) February 18, 2023
【重心移動のトレーニング】声で擬音を出す、音楽を流して合わせながらやる
【重心移動のトレーニング】ラダートレーニングをやるべきか?
重心移動・体重移動のトレーニングとしてラダーを使うのも有効な手段ですね。
ラダートレーニングをやる時の注意点として、このページ的に3つほど指摘しておきたいと思います。
ラダーはどうしてもチャカチャカ走るので、苦手な人は真似しようとして、動作自体がとても雑になってしまいます。
重心移動のトレーニングなんかにはならなくなるわけです。
- 視線を上げる(視線のターゲットを設ける)
- 腕を前後に振るなど、上半身との連動を意識する(させる)
- 上げた足の「着地させる」を大事にする
以下、ひとつひとつコメントします。
視線を上げる(視線のターゲットを設ける)
最初は慣れるまでラダーを踏まないように視線を落とす選手がほとんどだと思います。
が、慣れてきたら視線のターゲットを設けて、視線を落とさないように走るようにしましょう(させましょう)。
一般に競技中であれば、人間が意識してモノを見る時には2つの目を水平にして見ます。
(上の小平奈緒さんのスケーティングの写真)
水平で見なければ正しい情報がつかめないことが本能的にわかっているんですね。
小さな子なら、ラダーのゴールの向こうにお母さん等に立っていてもらうとか、そんな感じでいいでしょう。
そして、見ることの大きな意義として、人間は「見よう」とすると顔が自然と目標物に正対します。
つまり頭部がしっかり立った状態になり、もっというと、視野が確保しやすいように首が回しやすくなり、そして、視野が取れている状態になると身体から余分な力が抜けるようになっています。
人間の身体は「見ることを最優先する」ようにできているんですね。
(お猿さんで、とつぜん隣の群れが襲ってきた場面を想像してみてください)
(サッカーでは、この本能を逆手に取った“ボール・ウォッチャー”という言葉もありますね)
だから視線を大事にしたいわけです。
視線を作って、姿勢を作って、重心を骨格に載せられるクセがつけば、重心運動はグッと楽になると思いますよ。
上でも書きましたが、人間は生まれてこの方、ずっと重力(地球の万有引力)にさらされて生きてきています。
その重力の方向と、三半規管などとの連動で、人間は無意識に地面との垂直ラインと水平ラインを知覚できるようになっています。
ただし、運動が苦手だったり、ここで書いているように重心移動が苦手な人は、この2つのラインが若干アバウトなぼんやりした状態になっています。(もしくは、成長過程)
理由としてざっくり言ってしまえば、三半規管などの持って生まれた機能性だったり、まだ成長しきっていない、あるいは、運動不足で衰えがある、病気の影響がある、といったことが考えられますね。
もし、アバウトだったり、成長過程だったりする場合に、どうやって是正・開発するか?
「視覚とセットで鍛える」という方向もあります。
視ることで、水平バランスは知覚できますね。
水平がわかれば、垂直も自然と知覚できていきます。
運動が苦手な人の、運動中の視線がどこに向かっているか、何を視ているか、を観察してみてください。
しっかり視ながら運動することで、三半規管等のアバウトな仕様が是正され、精度を高められる、といってよいと思います。
よく運動能力のバランス・テストなどで、目をつぶって片足立ちして何秒立ってられますか?みたいなのがありますよね。
視れば楽にバランスが取れるわけです。
視覚と耳周りとで調整させる運動経験をたくさん持てれば、重心移動のようなまさに物理法則に則るための精度が高められるでしょう。
腕を前後に振るなど、上半身との連動を意識する(させる)
上げた足の「着地させる」を大事にする
まとめ【重心移動のトレーニング】